2012年2月1日水曜日

日本の将来を決める二つの要因


世界が大きく変わる中で、日本は、これからどうなるのでしょう。日本の将来像を考える時、二つの面があると考えると分かりやすいと思います。一つは、人口減少、少子高齢化が世界最速のスピードで加速する側面です。日本の人口は、既に減少局面に入っています。人口が減るということは、その国にとって、とても大きな要素です。
 そもそも、人口が極端に減ってしまうと、ものを作るための労働力が少なくなりますから、多くの製品を作ることが難しくなります。また、人口が少なくなるということは、ものを買う人も少なくなるわけですから、経済の規模=GDPが縮小する可能性が高くなります。つまり、その国の経済の実力が衰えてしまいます。
 人口が減り、しかも少子高齢化が進むということは、それ以外にも大きなマイナス要因をもたらします。例えば、年金や社会保障の制度などにも、重大な問題が発生する可能性があります。というのは、年金や医療などの制度は、一定の人口構成を前提にして設計されています。現在の制度は、かなり昔に作られたため、人口が減ったり、少子高齢化がこれほどのスピード進展することを想定していません。
 ところが、現在では、人口が予想以上に早い段階で減少に転じ、しかも、人口構成が大きく変化しているため、制度がその変化に追いついていません。今後、制度を実態に合わせる試みがなされると思いますが、20代から50代までの人々の負担は増加し、60代以降の給付は減少せざるを得ないと思います。残念ですが、若い人たちは、それなりの覚悟をしておいた方がよいと思います。
 一方、日本の企業活動については、かなり明るい面が多いと思います。最も重要なファクターは、もの作りの伝統や技術です。世界の中で、日本企業が持っている、もの作りの伝統や技術は、今でも世界最高水準といわれています。中国のある友人は、「中国の企業にとって、現在、最もほしいものは、日本企業の技術者だ」と言っていました。

それは、日本の中にいると分かりにくいのですが、海外で生活してみると、日本製品の品質はトップレベルということを実感するケースがありました。そうしたもの作りの伝統や技術は、他の国が、一朝一夕にマネのできるものではないでしょう。その強みを生かせれば、日本企業は、世界の市場の中で、有利な地位を維持することができます。
 特に、これから高い成長が期待されるアジア諸国では、多額のインフラ投資が必要になります。道路を作ったり、橋を架けたり、港湾施設を整備したり、ものを作るための工場を作ることになるはずです。そのためには、高度な機械などが必須です。日本企業は、必要な資材や機械を作る技術を持っています。その技術を上手く生かせば、日本企業は高い収益力を維持することができると思います。
 この二つの面を総合して考えると、日本の将来像が浮かび上がってきます。人口減少・少子高齢化が一段と進むため、地方経済の活力はさらに低下すると考えられます。一方、人口が集中し、大手の主力輸出企業が集まる都市部は、一段と活力を増すことになるはずです。つまり、今までの都市-地方の格差が広がる可能性が高いと予想されます。
 国内需要を基本とした企業、特に汎用性の高い製品を土台にする企業は、これからかなり厳しい状況に追い込まれるでしょう。それに対して、世界市場で相応のシェアを持った企業は、高い収益を上げることができるでしょう。その結果、日本国内では、地域間、企業間の格差が一段と広がる可能性が高いと思います。
 そうした状況で幸福を掴むには、まず、何を幸福の尺度にするかが問題です。経済的な価値を重視するのか、あるいは、ゆとりや文化的なものに価値を見出すのかを、しっかり自分で決めておく必要があります。つまり、これから社会全体が遠心分離機にかかったように格差が広がる中で、いかに自分らしく生きるかを考えることが必要です。
真壁 昭夫(まかべ・あきお)
信州大学経済学部教授のまかべさん言っておられます。これから国を支えていくのは私たちの世代。ちゃんと考えなければ。

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